学び系

重篤な疾患での入院患者さんにおける退院支援における多職種連携の重要性

はじめに

重篤な病気で入院すると、体力の低下、金銭的負担、家庭環境の変化 など、多くの課題が生じます。そのため、病状が改善したからといって必ずしも自宅退院が容易にできるわけではありません。特に呼吸器疾患の患者では、以下のような病態が問題となり、退院後の生活に大きな影響を与えます。

呼吸器疾患治療後の主な課題

課題詳細
呼吸機能の低下重症肺炎、間質性肺炎、COPD などによる呼吸機能の低下。在宅酸素療法やNPPVが必要になるケースも多い。
間質性肺疾患の治療合併症ステロイド治療による筋力低下、糖尿病、易感染性。特に急性増悪や膠原病肺、過敏性肺臓炎の患者で顕著。
薬剤性肺傷害ステロイド治療の副作用や、背景となった基礎疾患の治療の遅延により、治療が難航する可能性がある。
肺がん治療の副作用化学療法による副作用、進行に伴う悪液質(体重減少・全身衰弱)などが退院後の生活に影響を及ぼす。
退院後の環境整備の困難さ体力低下によりADL(日常生活動作)が困難となり、介護の必要性が増す。医療・介護費の負担や住宅改修の必要性も課題。

多職種連携の重要性と相互補完の必要性

患者の退院後の生活を支えるためには、医療・介護・福祉の専門職が互いの専門性を尊重し、相互補完することが不可欠 です。

職種役割と強み課題(弱み)
医師(各診療科)病態の管理、治療方針の決定在宅医療の実情に詳しくないこともある
看護師(病院・訪問看護)入院中のケア、退院後の訪問看護、呼吸療法管理物理的な訪問時間の制約がある
薬剤師薬物療法の管理、副作用対策、服薬指導訪問薬剤師が不足している地域がある
理学療法士(PT)呼吸リハビリ、筋力低下の回復支援呼吸器疾患以外の全身管理が求められることがある
栄養士栄養評価・指導、食事プラン作成退院後のフォローアップが難しいケースもある
在宅医療機器業者在宅酸素療法・NPPV機器の提供・管理各患者の状況に応じた最適な機器の選択が難しい場合がある

在宅酸素・NPPVを扱う主要業者

帝人、フクダ電子、フィリップス・ジャパン、エア・ウォーター、パシフィックメディコ

※上記は一例であり、他にも多くの業者が提供しています。


まとめ

重病患者の退院支援には、多職種が協力し、それぞれの強みを活かしつつ弱みを補完し合うことが重要です。特に、呼吸器疾患の患者では、呼吸機能の回復支援、治療の継続、リハビリ、在宅医療の導入 など、包括的なサポートが求められます。

医療機関と地域の介護・福祉サービスが連携し、患者が安全に療養できる環境を整備することが、今後の医療・介護の課題となります。

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