胸部CTでUIP(usual interstitial pneumonia)パターンを認めたとき、多くの臨床家がまず「IPF(特発性肺線維症)では?」と考えるでしょう。しかし、呼吸器内科の視点からは、この時点でIPFと決めつけてしまうのは非常に危険です。
実はUIPパターンは、膠原病関連ILD(RAや強皮症、MPAなど)や線維化型過敏性肺炎といった、二次性の間質性肺疾患でも頻繁にみられる画像所見です。診断を誤れば、治療方針も予後も大きくずれてしまいます。
UIPパターンを示す“非IPF”疾患たち
UIPパターンを呈する疾患はIPFだけではありません。特に重要なのは、膠原病や血管炎です。
なかでも頻度が高く、かつUIPをとりやすいのは以下のような疾患です。
- 関節リウマチ(RA)
- 顕微鏡的多発血管炎(MPA)
- 全身性強皮症(SSc)
また、線維化型過敏性肺炎(fibrotic HP)もUIP様の画像を呈することがあります。
診断が違えば、治療もまったく違う
IPFであれば、抗線維化薬(ピルフェニドンやニンテダニブ)が治療の中心になりますが、これらの二次性ILDではそうではありません。
- CTD-ILDやMPA-ILD → ステロイドや免疫抑制剤
- fibrotic HP → 抗原回避と免疫抑制剤
治療方針だけでなく、予後や長期戦略も大きく異なるため、最初の鑑別は極めて重要です。
症状と自己抗体、丁寧に拾い上げて
UIPパターンを見た際は、症状の拾い上げ(関節痛、皮疹、レイノーなど)や、自己抗体の評価(ANA、RF、MPO-ANCAなど)を怠らないことが基本です。
特に高齢者では「加齢による関節痛かな」と見逃しやすいですが、よくよく問診や採血を見直すとヒントが隠れています。
実際の一例:MPO-ANCA陽性MPA-ILD
つい最近も、私自身の経験でこんなことがありました。
高齢男性の患者さんで、胸部CTは典型的なUIPパターン。「これはIPFかな」と思いかけたのですが、微妙な関節症状があり、念のためMPO-ANCAを確認したところ陽性(本当は網羅的に自己抗体を測定しました….)。
腎機能や尿所見も評価すると、結果的に顕微鏡的多発血管炎(MPA)によるILD(慢性型の線維化型)と診断されました。
このように、画像だけでは見抜けない“本当の診断”が隠れていることは少なくありません。
まとめ:UIPパターンを見たときに心がけたいこと
- UIP=IPFではない。やはり基本は、二次性ILDを除外することが重要
- 特にRA、MPA、SSc、HPを常に念頭に置く
- 症状や自己抗体の評価をある程度ルーチンにする
- 迷ったらリウマチ・膠原病内科に積極的にコンサルト
間質性肺疾患の診療は、呼吸器内科単独では完結しません。リウマチ内科や病理、放射線診断医との連携こそが、正しい診断と適切な治療につながります。

<スマートフォンをご利用の皆さまへ>
他の記事をご覧になりたい場合は、画面下の「メニュー」「検索」「サイドバー」を使って、気になる話題を検索することもできますので、ぜひご活用ください。
<PCをご利用の皆さまへ>
他の記事をご覧になりたい場合は、画面上部のメニューバーや画面右側のサイドバーをご利用いただき、気になる話題をお探しください。