Effect of Ventilator Mode on Ventilator-Free Days in Critically Ill Adults: A Randomized Clinical Trial. Kevin P. Seitz et al. CHEST 2025.
はじめに

ICUでの人工呼吸管理では、肺保護を意識しつつ、患者に最適な呼吸サポートを行うことが求められます。
呼吸モードの選択はその第一歩ですが、エビデンスに基づく指針は限定的でした。

今回の研究で取り上げられたのは3つのモードです:
- Volume Control(VC:容量制御):1回の呼吸で送る空気の量を一定にします
- Pressure Control(PC:圧力制御):送る圧を一定にして、結果として入る量はその時の肺の状態で変わります
- Adaptive Pressure Control(APC:適応圧制御):設定した量に近づくように、圧を自動で調整するハイブリッド型です
これまで、どのモードが「良い」のかについて大規模な比較はされておらず、特にAPCを含んだ試験は初めてでした。

本研究では、VC、PC、APCの3モードが重症成人患者の人工呼吸器離脱日数(ventilator-free days, VFD)に与える影響を直接比較する初のランダム化比較試験(RCT)として実施されました。
背景
人工呼吸管理では、どのモードを選択するかが臨床的に重要ですが、それが実際に患者の転帰に与える影響は明確にされていない。
目的
本研究は、3つの主要な人工呼吸モード、
- Volume Control(VC:容量制御)
- Pressure Control(PC:圧力制御)
- Adaptive Pressure Control(APC:適応圧制御)
の間で、28日間における人工呼吸器離脱日数(ventilator-free days, VFD)を比較した。
方法
Vanderbilt大学のICUにおいて、2022年11月~2023年7月の間に、クラスターランダム化クロスオーバーデザインで月単位にモードを切り替え、566名の成人重症患者を対象に比較を行った。
結果
3群間でVFDに有意差なし(VC群:中央値23日、PC群:22日、APC群:24日、P=0.60)。
一方で以下のようなモード特性の違いが示された:
- PC群:換気量が過剰になる割合が高かった(>8mL/kg)
- VC群:吸気圧が高くなりやすかった
- APC群:浅い鎮静で管理される傾向
結語
モードの違いによって致命的な転帰差は生まれなかったが、換気パターンや鎮静レベルに違いがみられたため、今後の大規模研究が必要と考えられる。
解説
🫁人工呼吸器モードの特徴(復習)
モード | 特徴 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|
VC(容量制御) | 吸気量(tidal volume)を一定にする | 肺保護換気をしやすい | 吸気圧が高くなることがある |
PC(圧力制御) | 吸気圧を一定にする | 吸気圧が安定しやすい | 換気量がばらつきやすい |
APC(適応型圧力制御) | 一回換気量を目標にして、吸気圧を自動調整 | VCとPCのいいとこどり | モードによって設定がやや複雑 |
🧾研究結果のポイント
✅主要アウトカム(人工呼吸器非装着日数)
- VC:23日(中央値)
- PC:22日
- APC:24日
→ 差はなし(P=0.60)。つまり、どのモードでも明らかな優劣はつかず。
✅中間アウトカム(呼吸パターンや圧力)
- 吸気量が多すぎた(>8 mL/kg)割合:
- VC:4.0%
- PC:10.6%
- APC:4.7%
→ PCでは過換気の傾向あり
- 吸気圧(peak pressure):
- VC:21.6 cmH₂O
- PC:19.3 cmH₂O
- APC:20.2 cmH₂O
→ VCは吸気圧が高め
- 鎮静の深さ(RASSスコア)
- VC:-1.0
- PC:-0.9
- APC:-0.8
→ APCの方が鎮静が浅い傾向
💡この研究のポイントと臨床へのヒント
- どのモードを使っても、呼吸器離脱までの期間はほぼ同じという結果でした。
- しかし、VCは吸気圧が高くなりがち、PCは過換気になりやすいという特徴があり、APCはバランスが取れている印象です。
- 鎮静が浅くなる=早期離脱やせん妄予防にもつながる可能性があり、APCは一つの選択肢として注目されます。
🧭臨床現場での活かし方
状況 | 推奨されるモード(例) | 理由 |
---|---|---|
ARDSなどで肺保護換気が最優先 | VCまたはAPC | 一回換気量を管理しやすい |
高吸気圧が問題になるとき | PCまたはAPC | 吸気圧をコントロールできる |
鎮静を浅めに管理したいとき | APC | 鎮静が浅くなる傾向あり |
モード選びに悩んだとき | APC | 中間的な性質を持つため安全域が広い可能性あり |
✅まとめ
まだパイロット試験なので、今後の大規模RCTでの検証が待たれます。
呼吸器モードは「VC」「PC」「APC」それぞれにメリットとデメリットがあります。
本研究では、人工呼吸器離脱までの期間に差はありませんでした。
肺保護や鎮静管理という観点では、APCが最もバランスの取れた選択肢かもしれませんが、今のところ使い慣れたモードでよいかもしれませんね。