間質性肺疾患論文紹介

COPDGeneにおける間質性肺疾患の発症、進行、および死亡率(Rose JA, et al. Am J Respir Crit Care Med. 2024)

Development, Progression, and Mortality of Suspected Interstitial Lung Disease in COPDGene
Rose JA, et al. Am J Respir Crit Care Med. 2024. PMID: 39133466

Interstitial Lung Abnormalities(ILA)を持つ一部には間質性肺疾患(ILD)が疑われる患者さんが含まれ、不良な予後を示す可能性があります。ただし、そのようなILDの発症率や進行率、そして死亡率に影響するかどうかについては明確ではありません。

この研究の目的

ILDの発症率、進行率、および死亡率を調査し、ILDや進行基準がこれらに与える影響を評価すること。

方法

  • COPDGene(過去に行われた慢性閉塞性肺疾患の遺伝疫学研究)の参加者を対象としました。
  • 登録時および5年後の追跡調査で、ILAと呼吸機能の評価があった患者が解析されました。
  • ILDの定義:ILAと線維化の存在、および/またはFVC < 80%
  • 登録時に既存ILD(prevalent ILD)を評価し、5年後の追跡調査で新規発症ILD(incident ILD)および進行を評価しました。
  • CT進行は視覚的に評価し、FVCの低下は相対変化で測定しました。
  • 多変量Cox回帰モデルを使用して、死亡率と既存ILD、新規発症ILD、および進行との関連性を解析しました。

主な結果

登録時の9,588人のうち、268人(2.8%、ILAの51%)が既存ILDを持っていました。
既存ILDのグループの死亡率は10.6年の中央値で51%であり、ILAのみのグループ(33%)より高かった(ハザード比[HR]:2.0、P < 0.001)。
線維化基準のみで定義された既存ILD(FVC ≥ 80%)のグループはさらに高い死亡率(58%)を示しました(HR: 2.2, P < 0.001)。

5年後の追跡調査で、既存ILDを持つ98人のうち、

  1. 33%が安定(CT進行なし、FVC低下 <10%)
  2. 6%がFVC低下(≥10%)のみ
  3. 39%がCT進行のみ
  4. 22%がCT進行とFVC低下(≥10%)の両方

1~4のグループの死亡率は、それぞれ31%、50%、45%、45%であり、特にCT進行のみのグループはILA単独の死亡率より悪化していました(HR: 2.6, P = 0.005)。

さらに、5年後の追跡調査で、新規発症ILDは、既存ILDを持たない4,842人中148人(5.5/1,000人年)に認められ、死亡率はILAよりも高かった(HR: 2.4, P < 0.001)。

結論

COPDGeneにおけるILD基準を満たす患者では、死亡率および進行率が高いことが示されました。特に線維化と画像上の進行が死亡率の重要な予測因子であることが明らかになりました。

つまりこういうことですね。

  • ILAの患者さんの中で、さらに「線維化の存在、および/またはFVC < 80%」のILD基準を満たす場合にはこの基準を満たさない場合よりも死亡率が高く、特に線維化がある場合にはさらに死亡率が上昇する。
  • ILD基準を満たすILA患者さんの中でも、CTで進行する場合には死亡率が高い。
  • ILD基準を満たさないILAの中でも、経過中にILD基準を満たすようになると死亡率が高い。

検診や他診療科で偶然見つかったILAでは、線維化所見、FVC<80%、CT進行に注意ですね。

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