Deupirfenidone Compared with Pirfenidone and Placebo in Idiopathic Pulmonary Fibrosis (ELEVATE-IPF): a Phase 2b Randomized Placebo-Controlled Trial. Maher TM et al. American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine. 2026.
IPFに対する新規抗線維化薬デューピルフェニドンを検証した第2b相試験です。特に825 mg TID群では、26週時点のFVC低下量がプラセボより小さく、ピルフェニドンよりも数値上は良好な傾向を示しました。
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はじめに

IPFでは、ピルフェニドンとニンテダニブが使える時代になりましたが、それでも疾患進行を完全には止められません。
著者らはまず、「効果が限定的であること」と「副作用による継続困難」が現在の大きな問題だと整理しています。
特にピルフェニドンは、用量依存的に効果が期待される一方で、消化器症状がネックになります。つまり、「もっと曝露量を上げたいが、副作用で限界がある」という薬なんですね。

そこで登場するのがデューピルフェニドンです。
これはピルフェニドンの重水素化製剤で、薬力学的作用は維持しながら、薬物動態を変化させた薬剤です。
著者らは、「より高い曝露量を確保しつつ、忍容性を保てるのではないか」という仮説を立てています。
この試験では、その仮説を実際にIPF患者で検証するため、デューピルフェニドン 550 mg、825 mg、ピルフェニドン、プラセボを直接比較しました。
背景
デューピルフェニドンは、ピルフェニドンを重水素化した化合物であり、薬力学的活性を保持しつつ、異なる薬物動態プロファイルを有する。この特性により、特発性肺線維症(IPF)患者において、より高い有効性と良好な忍容性が期待される。
目的
IPF患者において、デューピルフェニドンの有効性および安全性を、プラセボおよびピルフェニドンと比較して評価することである。
方法
患者を、デューピルフェニドン 550 mg TID、デューピルフェニドン 825 mg TID、ピルフェニドン 801 mg TID、またはプラセボへ1:1:1:1で無作為割付した。
主要評価項目は、26週時点におけるデューピルフェニドン統合群とプラセボ群とのFVC変化率であった。
主要解析にはBayesian法、副次解析にはfrequentist法を用いた。
結果
257例のIPF患者が無作為化。
試験終了時点で治療継続していた割合は、プラセボ群80.0%、ピルフェニドン群68.3%、デューピルフェニドン 550 mg群64.6%、デューピルフェニドン 825 mg群78.1%であった。
Bayesian解析では、26週時点のFVC変化量は、
- プラセボ群で−110.71 mL(95% CI −148.75〜−70.98)
- デューピルフェニドン統合群で−48.42 mL(95%CI −87.66〜−9.04)
であり、群間差は62.29 mL(95% CI −6.13〜115.73、事後確率 0.985)であった。
Frequentist解析では、FVC変化量は、
- プラセボ群で−112.5 mL(95% CI −167.2〜−57.8)
- デューピルフェニドン 825 mg群で−21.5 mL(95% CI −78.2〜35.1)
であり、群間差は91.0 mL(95% CI 12.2〜169.7、p=0.02)であった。
各実薬群で最も多かった有害事象は消化器系有害事象であった。
結語
IPF患者において、デューピルフェニドンは26週間にわたり肺疾患進行を抑制した。

感想です。
どんな研究でどんな結果だったか?
研究デザイン
4群並行群間比較の第2b相RCT。
二重盲検で、プラセボだけでなくピルフェニドン実薬群も置かれています。
主な組み入れ基準
- 40歳以上
- 国際基準に基づくIPF診断
- UIPまたはprobable UIP
- FVC ≥45%
- DLCO 30〜90%
主な除外基準
- ピルフェニドン既治療
- ニンテダニブ 6か月超
- 有意な肺高血圧
- CTD-ILD
- 喫煙・電子タバコ使用
介入
| 群 | 用量 |
|---|---|
| デューピルフェニドン低用量群 | 550 mg TID |
| デューピルフェニドン高用量群 | 825 mg TID |
| ピルフェニドン群 | 801 mg TID |
| プラセボ群 | placebo TID |
全群とも3週間かけて漸増。
主要評価項目
26週時点のFVC低下率(mL)
副次評価項目
- FVC% predicted変化
- IPF進行までの時間
- 用量調整頻度
- 特に注目すべき有害事象
各群の26週時点治療継続率:
| 群 | 継続率 |
|---|---|
| placebo | 80.0% |
| ピルフェニドン | 68.3% |
| デューピルフェニドン 550 mg | 64.6% |
| デューピルフェニドン 825 mg | 78.1% |
主要評価項目
| 群 | FVC変化 |
|---|---|
| プラセボ | −110.71 mL |
| デューピルフェニドン統合群 | −48.42 mL |
群間差は62.29 mL、事後確率 0.985でした。
この試験で事前に定義された成功基準(0.9)は超えています。


高用量825 mg群
ここが実際には最も重要な結果
| 評価項目 | プラセボ | デューピルフェニドン 825 mg | 群間差 |
|---|---|---|---|
| FVC変化 | −112.5 mL | −21.5 mL | +91.0 mL |
| FVCpp変化 | −3.43 | −0.43 | +3.00 |
※ FVCpp変化=FVC percent predicted(予測努力性肺活量%)の変化
FVCではp=0.02、FVCppではp=0.01でした。
26週間でプラセボ群は約110 mL低下している一方、高用量群は約20 mL低下に留まっています。

IPF progression
FVCpp 5%以上低下または死亡までの時間では、
- HR 0.439、p=0.0023

用量反応
825 mg群は550 mg群より数値上良好
| 群 | FVC変化 |
|---|---|
| 550 mg | −80.7 mL |
| 825 mg | −21.5 mL |
ただし、群間有意差はなし。
ピルフェニドン群
ピルフェニドン群でもプラセボよりFVC低下抑制傾向がみられました。
| 群 | FVC変化 |
|---|---|
| placebo | −112.5 mL |
| ピルフェニドン | −51.6 mL |
群間差は60.9 mLでしたが、有意差はなし(p=0.13)。
結果をどう解釈するか?
重要ポイントは、
「デューピルフェニドン 825 mgは、ピルフェニドンより高い曝露量を達成しながら、忍容性を大きく損なわず、より強い抗線維化効果を示した可能性がある」という点ですね。
あとは、ピルフェニドン群を内部対照として置いた点に意味があります。ASCEND試験でのピルフェニドン効果量と今回の効果量が近かったため、「この試験の妥当性がある」ということになりそうです。
また、デューピルフェニドン 825 mgでFVC低下がかなり小さかった点を強調しています。Figure E4を見ると、プラセボ群との効果の差が比較的早期から広がっています。

注意点 リミテーション
- この試験はPhase 2bであり、257例・26週という比較的小規模短期間試験
- 背景抗線維化薬を許容していない(スイッチや併用の意義が不明)
- 死亡脱落の影響が否定できない。
まとめ
- Phase 2なので、「有効の可能性」を見ることが主目的であり、まだ評価は早い。
- しかし、ピルフェニドン系薬剤の改良でここまでFVC低下を抑えられる可能性があるという点は、Phase 3につながるので期待したいところ。

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