救急外来
指導医「(喘息発作?)
B先生、ファーストタッチ頼んだぞ!」
研修医B「は、はい!」
—— 10分後 ——
研修医B「せ、先生っ!大変です!
食物依存性運動誘発アナフィラキシーかもです!」
指導医「え~?喘息じゃないの~?」
B「なんかぁ…聴診しようとしたらぁ…
首とか胸にじんましんめっちゃ出ててぇ…
え? これ喘息だけじゃなくね?
って思ってぇ…
でぇ…なんか、お昼にパン食べたあと、
体育の授業中に発症したらしくてぇ…
普段パンだけなら平気らしくてぇ…
ん?…食物+運動で出るやつ??…
おいおい!これって『ザ!世界仰天ニュース』で定番のやつじゃん!
ってびっくりしてぇ…」
(ドキドキ)
—— そして入院精査——
ω-5グリアジンIgE抗体陽性‼️
※小麦主要成分
小麦に対する皮膚プリックテスト陽性‼️
小麦製品摂取後の運動誘発試験陽性‼️
指導医「俺のほうが仰天したわ。」
解説1
<アナフィラキシーとは?>
急速に起こる全身性の過敏反応(多くはアレルギー反応)で、短時間のうちに発現し、命に関わり得る状態です。
症状: 皮膚や粘膜に蕁麻疹、紅斑、掻痒(かゆみ)などが数分から数時間で出現し、さらに呼吸器症状(喘鳴、呼吸困難など)、循環器症状(血圧低下、失神など)、消化器症状(嘔吐、腹痛、下痢など)を伴うことがあります。
典型例では診断は比較的容易ですが、すべての症状がそろわない場合や、皮膚症状が目立たない場合もあり、そのような症例ではアナフィラキシーと気づかれにくいことがあります。
原因
アレルゲン曝露に伴って発症し、代表的なものとして食物(小麦、甲殻類など)、ハチ刺傷、薬剤などが挙げられます。
治療
重症度評価とABCの安定化を行いつつ、第一選択はアドレナリンの筋肉内注射です。
<食物依存性運動誘発アナフィラキシーとは?>
特定の食物を摂取しただけでは症状が出ない一方で、その後に運動を行うことでアナフィラキシーを発症する病態です。
つまり、「食物」単独でも「運動」単独でも起こらず、『両者が組み合わさったときに初めて発症する』ことが特徴です。 多くは食後数分〜数時間以内の運動中あるいは運動後に発症します。
喘息既往がある場合、喘鳴が前景に立って喘息発作と誤認されることもあります。
原因食物としては、 小麦が多く、そのほか甲殻類、果物なども報告されています。
また、運動以外にもNSAIDs内服、飲酒、入浴、疲労などが発症の閾値を下げ、誘発・増悪因子となることがあります。
実際に多い状況としては、 昼食にパンやパスタ、甲殻類を摂取した後に、学生であれば体育の授業や部活動中に発症する、成人であれば食後の運動やジョギング中に発症する、といったパターンが挙げられます。
飲酒も増悪因子となるため、普段は発症しない人でも、飲酒に加えて甲殻類などを摂取し、その後に走るなどの行動が重なると発症することがあります。
治療は、 一般のアナフィラキシーと同様で、第一選択はアドレナリンの筋肉内注射です。
再発予防としては、 原因食物が疑われる場合に食後一定時間の運動を避けること、誘発・増悪因子を回避すること、必要に応じて自己注射アドレナリン(エピペン)を携行することが重要です。
FDEIAでは、運動や増悪因子を回避できる状況であれば原因食物を必ずしも完全除去する必要はない場合もあるため、原因の特定と適切な生活指導が重要になります。
解説2
本症例:
本症例では喘息の既往があることから、当初は喘息発作が疑われました。しかしB先生は聴診の際に頸部から胸部にかけての蕁麻疹を確認し、喘息発作のみでは説明しにくい所見としてアナフィラキシーを想起しました。
典型例では、 皮膚症状が目立つため診断は比較的容易ですが、衣服で隠れている場合や皮疹が目立たない場合には見逃されやすく、アナフィラキシーと気づきにくいことがあります。また、搬送中の経過や初期対応により、血圧や皮疹などの所見が一部軽快していることもあります。丁寧に診察して所見を拾い上げたB先生の対応は適切でした。
アナフィラキシーを疑った時点で重要なのは、まず早期に治療介入を行うことです。
そのうえで再発予防の観点から原因検索を進めます。
B先生は問診で発症状況を整理し、学生で頻度の高い「昼食後の体育の授業中に発症」という典型的なシチュエーションを確認しました。さらに昼食内容も確認し、食物と運動の組み合わせで発症していることから、食物依存性運動誘発アナフィラキシーを疑う根拠を積み上げています。
また、過去に『ザ!世界仰天ニュース』で同様の事例が紹介されていたことを思い出した点も、鑑別の発想として有用でした。 エンタメ番組であっても、臨床で遭遇しにくい病態を知るきっかけになることがあり、今回のように診断のヒントにつながる場合があります。
本症例は、若手医療者に「身体所見・病歴聴取の重要性」および「テレビ番組で紹介されるような特殊事例も学びのきっかけになり得ること」を伝えることを目的としています。また、今回のエピソードは過去の実例を基に再現したものです。

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