Efficacy and safety of nerandomilast in patients with autoimmune disease-related progressive pulmonary fibrosis in the FIBRONEER-ILD trial. Anna-Maria Hoffmann-Vold et al. Annals of the Rheumatic Diseases, 2026.
この論文は、IPF以外の進行性肺線維症(PPF)患者を対象としたPDE4B阻害薬ネランドミラスト(ジャスケイド)の有効性と安全性を検討したFIBRONEER-ILD試験の中で、自己免疫疾患関連ILDに焦点を当てたサブグループ解析ですね。
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はじめに

膠原病などの自己免疫疾患では、しばしば間質性肺疾患(ILD)が合併します。
その中でも進行性肺線維症(PPF)の経過をたどる患者は、予後不良で、死亡率が高いことが問題視されています。
自己免疫疾患関連ILDの患者の多くは、すでに何らかの免疫抑制剤を使用していて、それらの薬剤にはILDの進行を遅らせる可能性がありますが、長期的なアウトカム、特に生存率の改善効果については、エビデンスが限定的です。

本研究では、IPF以外のPPFを対象とした、PDE4B阻害薬ネランドミラスト(ジャスケイド)の有効性と安全性を検討したFIBRONEER-ILD試験の中で、自己免疫疾患関連ILDに焦点を当てたサブグループ解析です。
背景と目的
本研究の目的は、FIBRONEER-ILD試験において、自己免疫疾患関連間質性肺疾患(自己免疫ILD)を有し、進行性肺線維症を呈する患者に対するnerandomilastの効果を検討することである。
方法
PPF患者を、nerandomilast 9 mg 1日2回、nerandomilast 18 mg 1日2回、またはプラセボに無作為化した。
自己免疫ILD患者において、52週時点の努力性肺活量(FVC)の変化、ならびに試験全期間における時間依存性エンドポイントおよび有害事象を評価した。
結果
自己免疫ILD患者325例において、52週時点のFVC変化量の調整平均、標準誤差は、
- プラセボ群で−107.1(25.0)mL
- nerandomilast 9 mg 1日2回群で−61.2(23.3)mL
- nerandomilast 18 mg 1日2回群で−64.9(23.5)mL
であった。
プラセボとの差は、
- 9 mg群で45.9 mL(95%信頼区間−20.8〜112.6)
- 18 mg群で42.2 mL(95%信頼区間−24.9〜109.3)
であった。
試験全期間、試験薬への平均曝露期間15.8か月において、ILD急性増悪、呼吸器原因による入院、または死亡の初回発生までの時間(複合エンドポイント)に関するプラセボに対するハザード比は、
- nerandomilast 9 mg 1日2回群で0.66(95%信頼区間0.40〜1.10)
- nerandomilast 18 mg 1日2回群で0.56(95%信頼区間0.33〜0.94)
であった。
死亡までの時間に関するハザード比は、
- nerandomilast 9 mg 1日2回群で0.40(95%信頼区間0.17〜0.94)
- nerandomilast 18 mg 1日2回群で0.28(95%信頼区間0.11〜0.69)
であった。
有害事象による治療中止は、プラセボ群、nerandomilast 9 mg 1日2回群、nerandomilast 18 mg 1日2回群で、それぞれ13.0%、8.0%、10.6%であった。
結語
FIBRONEER-ILD試験の全体集団と一貫して、自己免疫ILD患者においても、nerandomilastは肺線維症の進行を遅らせ、忍容性は良好であった。

感想です。
どんな研究でどんな結果だったか?
この解析の対象は、FIBRONEER-ILD試験に登録されたPPF患者のうち、自己免疫疾患関連ILDを有する325例です。
患者背景
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 自己免疫ILD患者数 | 325例 |
| RA-ILD | 118例、36.3% |
| SSc-ILD | 75例、23.1% |
| MCTD-ILD | 47例、14.5% |
| IIM-ILD | 33例、10.2% |
| SjD-ILD | 27例、8.3% |
| その他の自己免疫ILD | 25例、7.7% |
| 平均年齢 | 63.4歳 |
| 女性 | 65.2% |
| 平均FVC % predicted | 71.5% |
| 平均DLco % predicted | 51.5% |
| UIP/UIP-like pattern | 78.8% |
| ニンテダニブ使用 | 34.2% |
| 免疫調節薬使用、プレドニゾン除く | 55.1% |
この背景で注目したいのは、約8割がUIP/UIP-like patternだった点です。自己免疫ILDと聞くとNSIPパターンを思い浮かべることもありますが、この試験ではPPFを満たす患者を対象にしているため、かなり線維化進行リスクの高い集団が選ばれている印象です。
FVC低下はnerandomilast群で抑制

サブグループ解析なのでサンプルサイズが減少し、統計学的な有意差はありませんが、方向性としてはプラセボよりもネランドミラスト群でFVC低下が小さく、FIBRONEER-ILD全体集団の結果と一貫しています。ちなみに、9mgでも18mgでも似たような効果が得られていると見えます。
イベントアウトカム

次に重要なのが、イベントアウトカムです。
ILD急性増悪・呼吸器原因による入院・死亡の複合アウトカムは、以下の通り。
| 群 | イベント発生 |
|---|---|
| プラセボ | 33.0% |
| Nerandomilast 9 mg 1日2回 | 24.1% |
| Nerandomilast 18 mg 1日2回 | 24.8% |
プラセボと比較したハザード比は、9 mg群で0.66、18 mg群で0.56でした。特に18 mg群では95%信頼区間が0.33〜0.94で、有意なリスク低下が示されています。
死亡は、プラセボ群16例、nerandomilast 9 mg群8例、18 mg群7例。
プラセボに対する死亡のハザード比は、9 mg群で0.40(95%CI 0.17~0.94)、18 mg群で0.28(95%CI 0.11~0.69)。
ネランドミラストは死亡リスク低下と有意に関連していますが、サンプルサイズが小さいのと副次項目ということで、さらなる検証が必要に思います。
ですが、有望な結果ですね。
安全性
安全性では、有害事象による治療中止がプラセボ13.0%、9 mg群8.0%、18 mg群10.6%。
少なくとも中止率はnerandomilast群で高くありませんでした。
下痢は最も多い有害事象で、プラセボ24.0%、9 mg群28.6%、18 mg群31.0%。
体重減少、食欲低下、悪心なども目立ちますが、下痢による中止は9 mg群0.9%、18 mg群1.8%と少数でした。

結果をどう解釈するか?
この論文のメインメッセージは、自己免疫性ILDに伴うPPF患者サブグループでも、ネランドミラストはFVC低下を抑える方向に働き、臨床イベントや死亡リスクを減らす可能性があるということです。
あと、もう一つ大事なのは、nerandomilastの効果が、HRCT pattern、ニンテダニブ使用の有無、免疫抑制剤使用の有無にかかわらず、おおむね一貫していたとされる点です。
注意点 リミテーション
- 自己免疫ILDサブグループの有効性評価を目的に十分な検出力を持つよう設計された試験ではない(背景疾患のサンプルサイズは十分とは言えない)。したがって、FVC低下抑制の方向性は一貫しているが、「確実に有効」と言いきれない(サブ解析だから当たり前といえば当たり前)。
- RA-ILD、SSc-ILD、MCTD-ILD、IIM-ILD、SjD-ILDなどが含まれているが、各疾患別の症例数も十分でない。ゆえに、疾患ごとの有効性もなんとも言えない。
- ミコフェノール酸モフェチルなど一部のよく使われる免疫抑制剤はスクリーニング時に除外されており、それらの薬剤を使用中の患者におけるnerandomilastの有効性・忍容性は不明。実臨床ではミコフェノール酸モフェチルを使用している患者さんもいるため、この点はかなり実用上の制約かも。
まとめ
自己免疫関連のPPF患者さんに対するネランドミラストの上乗せは呼吸機能悪化や死亡リスクを減らす可能性あり。下痢はちょっと増えるが、大きな差ではなさそう。

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