間質性肺疾患論文紹介

乾癬患者における間質性肺疾患の有病率と臨床的特徴(Kanaji N, et al. BMC Pulm Med. 2024)

Prevalence and clinical features of interstitial lung disease in patients with psoriasis

まず、乾癬について簡単に説明します。

乾癬(psoriasis)は、皮膚において紅斑銀白色の鱗屑を特徴とする疾患です。慢性疾患であり、寛解と再発を繰り返します。

疫学は以下の通りです。

  • 有病率: 世界的に2~3%。日本では約0.1~0.3%
  • 性差: 男女差はほとんどなし
  • 好発年齢: 20~30代と50~60代に発症のピークあり

メカニズムとして、以下が考えられています。

  1. 免疫異常:活性化されたT細胞による炎症性サイトカイン(IL-17、IL-23、TNF-αなど)を放出→皮膚の炎症
  2. 皮膚の異常なターンオーバー: 免疫反応が皮膚の角化細胞を過剰に刺激し、通常28日周期のターンオーバーが数日で行われるようになり、皮膚の肥厚と鱗屑が蓄積を誘導する。

乾癬の治療

  1. 軽症例では外用薬: ステロイドやビタミンD3製剤
  2. 中等症~重症例:
    • 光線療法: ナローバンドUVBやPUVA療法。
    • 免疫抑制剤:メトトレキサートやシクロスポリンなど
    • 生物学的製剤(IL-17阻害薬、IL-23阻害薬、TNF-α阻害薬)

乾癬治療には生物学的製剤が使用されることがあり、その影響で呼吸器内科には結核などの感染症に関する相談が皮膚科から寄せられるケースが多くあります。

一方で、結核スクリーニングのCT読影において「間質性肺炎の所見があるため、呼吸器内科に相談してください」と指摘され、紹介されることも時々ありますよね?

たしかに、日常臨床ではILDを有した乾癬の患者さんに遭遇することは珍しくないように、個人的には思います。(私の外来にも何人かいます。)

乾癬とILDとの関連性については、うすうすみんな感じていると思うのですが、まだ十分なエビデンスがあるとは言えず、ガイドラインでもその位置づけははっきりしていないように思います。

本研究はそのようなクリニカルクエスチョンに対する香川大学からの報告になります。

背景

乾癬は自己免疫性疾患であるにもかかわらず、乾癬と間質性肺疾患(ILD)の潜在的な関連性は十分に解明されていない。

本研究の目的は、乾癬患者におけるILDの頻度および臨床的特徴を調査し、「乾癬関連ILD」という新しい概念的枠組みを提案することである。

方法

  • 乾癬患者117名を対象に後ろ向き解析を行った。
  • 尚、メトトレキサートまたは生物学的製剤の使用前に胸部画像が存在しない患者、およびILDを引き起こす他の併存疾患を有する患者は除外されている。

結果

  • 乾癬患者のうち12名(10%)にILDが確認された。
  • その内訳は、乾癬性尋常性(psoriasis vulgaris)患者50名中6人、乾癬性関節炎(psoriatic arthritis)患者65名中6人だった。
  • 12名中3名は喫煙歴がなかった。
  • ILDを伴う患者の血清KL-6値は、ILDを伴わない患者よりも高かった。
  • CT画像では、「Indeterminate for UIPパターン」が最も多く見られた。
  • 代表的な症例の肺生検標本でも「Indeterminate for UIP」が確認された。
  • 中央値8.9年の観察期間中、ILDが進行したのは5名のみであり、呼吸不全やILD進行による死亡例は認められず、概ね予後は良好であった。

結論

乾癬関連ILDは存在し、その頻度は乾癬患者の10%に相当する。

乾癬の初期診断時に胸部X線検査と血清KL-6検査を行うことで、ILDのスクリーニングに役立つと提案する。

また、ILDを診断する医師は、乾癬がILDと関連している可能性を考慮し、皮膚所見を慎重に評価すべきである。

乾癬では生物学的製剤使用前の結核スクリーニングも必要ですが、ILDの有無の評価も必要かもしれませんね。

ただ、これまでの乾癬とILDに関する研究は、ほとんどが単施設で行われた小規模なものばかりです。そのため、乾癬患者におけるILDの頻度が、一般集団と比べて本当に高いのかどうかは、まだ明確にはわかっていませんね。こうした点を解明するためにも、大規模な多施設研究が求められます。

スマートフォンをご利用の皆さまへ
他の記事をご覧になりたい場合は、画面左上の「メニュー」からジャンルを選択してお楽しみいただけます。
また、画面右下の「サイドバー」を使って、気になる話題を検索することもできますので、ぜひご活用ください。
PCをご利用の皆さまへ
他の記事をご覧になりたい場合は、画面上部のメニューバーや画面右側のサイドバーをご利用いただき、気になる話題をお探しください。

タイトルとURLをコピーしました