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肺癌や悪性腫瘍論文紹介

既治療RAS変異非小細胞肺癌に対するダラクソンラシブ

Daraxonrasib for Previously Treated RAS-Mutant Non-Small-Cell Lung Cancer. Arbour KC, et al. N Engl J Med. 2026.

ダラクソンラシブは、肺癌だけではなく膵癌でもすでに注目されている薬剤です。

膵癌では、300 mgを2次治療として投与されたRAS変異患者で奏効率29%、Grade 3以上の有害事象は65%でした。

さらに、この膵癌コホートの結果自体も2026年にNEJMで報告されています。

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はじめに

ダラクソンラシブはRAS(ON)を狙う薬であり、RAS変異は非小細胞肺がん(NSCLC)のおよそ30%に認められます。

しかし、RASそのものを薬で直接狙うことは長い間難しく、ようやくKRAS G12Cに対するソトラシブなどが登場しました。

一方、これらのKRAS G12C阻害薬は、基本的に特定の変異だけを狙うallele-specificな薬剤で、しかもGDPが結合した不活性型のRAS(OFF)を標的としています。

ダラクソンラシブは、そこが少し違います。Cyclophilin Aと活性化RASとの間に非共有結合性のtri-complexを形成し、GTPが結合した活性型RAS、つまりRAS(ON)を阻害します

さらにKRASだけではなくNRAS、HRAS、そしてG12、G13、Q61など、複数のRAS変異をまとめて標的にできることが特徴です。

ざっくり言えば、「KRAS G12Cだけを狙う」のではなく、「活性化しているRASをもっと広くまとめて抑えてしまおう」という薬ですね。

背景

RAS変異は、全体として非小細胞肺癌(NSCLC)において最も一般的な発癌ドライバーであり、患者のおよそ30%に認められる。

ダラクソンラシブ(RMC-6236)は、GTP結合状態にある変異型および野生型RAS蛋白アイソフォームを阻害する、経口投与可能なRAS(ON) multiselective tri-complex阻害薬である。

しかし、RAS変異NSCLC患者におけるダラクソンラシブの安全性および有効性は明らかではない。

方法

本研究は、ダラクソンラシブを検討する第1~2相、多施設共同、用量漸増・用量拡大試験である。

既治療の進行RAS変異NSCLC患者を登録し、ダラクソンラシブ10~400 mgを1日1回、21日を1サイクルとして経口投与した。

主要評価項目は安全性。

副次評価項目には、RECIST version 1.1に基づき研究者が評価した

  • 客観的奏効(完全奏効または部分奏効)
  • および、奏効期間などが含まれた。

結果

2025年7月21日のデータカットオフ時点で、ダラクソンラシブ300 mg以下の投与を受けたNSCLC患者136例について、安全性および有効性が評価された。

300 mg以下の投与を受けた患者では、治療との因果関係を問わない全Gradeの有害事象が99%に認められ、発疹、下痢、悪心、嘔吐、粘膜炎または口内炎が、それぞれ30%以上の患者に認められた。

Grade 3以上の有害事象は54%に認められ、5%以上に認められたものは、

  • 肺炎10%
  • 下痢9%
  • 発疹8%
  • 貧血5%

Grade 5の有害事象は4件認められた。

客観的奏効率は、ダラクソンラシブ120 mg以下で31%、160~220 mgで34%、300 mgで37%であった。

結語

既治療の転移性RAS変異NSCLC患者にダラクソンラシブを1日300 mg以下で投与したところ、54%にGrade 3以上の有害事象が認められ、30%以上の患者で抗腫瘍活性が認められた。

感想です。

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どんな結果だった?

結果のまとめ

136例が解析され、年齢中央値66歳、ECOG PS 1が79%、RAS G12V 37%、G12D 30%。

99%がプラチナ製剤、99%が抗PD-1/PD-L1抗体の治療歴を有していました。

全患者における奏効率は、以下のとおり。

DaraxonrasibORR95% CIDCR95% CI
≤120 mg31%14–52%85%65–96%
160–220 mg34%22–47%85%73–93%
300 mg37%24–52%80%67–90%

1~2次治療としてプラチナ製剤+抗PD-1/PD-L1抗体を受け、docetaxel未使用の患者に絞ったpost hoc解析では、160~220 mg群38例の

  • ORRは42%(95% CI 26–59%)
  • DCRは89%(95% CI 75–97%)
  • 奏効期間中央値11.5か月(95% CI 4.6か月–NE)。

この集団におけるPFS中央値は8.3か月(95% CI 4.0–12.5か月)、OS中央値は16.0か月(95% CI 9.5か月–NE)。

一方で有害事象は多く、Grade 3以上の有害事象は全体で54%、治療関連Grade 3以上は30%。

160~220 mg群では治療関連Grade 3以上が25%であったのに対し、300 mg群では45%。

論文解釈に注意するポイント

著者らは、daraxonrasibが複数のRAS変異に対して30%以上の奏効率を示した点を重要視。

特に160~220 mgと300 mgでは抗腫瘍効果が大きく変わらなかった一方で、300 mgでは有害事象や減量・休薬が増えていました。

そのため、有効性と安全性、薬物曝露を総合し、200 mgが第3相試験の用量として選択されています

注意点 リミテーション

  • Phase 1–2の非無作為化・単群試験であり、対照群がない。
  • PFS 8.3か月、OS 16.0か月という主要な有効性データは、全136例ではなくpost hocに抽出した38例の結果。
  • 正式な仮説検定を行っていない。
  • 各RAS変異サブタイプの症例数が少ない: G12D、G12V、G13、Q61など複数の変異で奏効はみられていますが、個々の変異ごとの有効性を確定できる症例数ではありません。
  • STK11、KEAP1、TP53共変異解析も症例数が少ない: 特にKEAP1変異は4例のみで、95% CIも非常に広く、共変異による効果の違いを評価するには不十分。
  • KRAS G12C患者の評価が限定的である。
  • 長期予後データがまだ成熟していない。
  • ECOG PS 0~1の患者しか登録されていない: PS 2以上の患者における有効性・安全性は不明。
  • ILD患者が除外されている。
  • 有害事象の治療関連性判定は研究者判断であり、一定の主観性がある。

まとめ

ダラクソンラシブは、G12DやG12Vを含む幅広いRAS変異NSCLCに対して、30~40%程度の奏効率を示しており、有望そうな結果といえます。

特に、これまで標的治療の選択肢が限られていたRAS変異に対して、RAS(ON)をまとめて狙えるという点は大きな魅力ですね。

一方で、今回の研究はPhase 1–2の単群試験で、PFSやOSのデータも限られたpost hoc解析に基づいています。長期的な有効性や、docetaxelなどの標準治療を本当に上回るのかについては、まだデータは未成熟です(P1-2なので当たり前と言えば当たり前)。

したがって現時点では、「期待できそうだが、標準治療を変えるかどうかは第三相試験での確認が重要」という位置づけですね。

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