論文紹介

ポリミキシンB固定化繊維カラム(PMX)を用いた直接血液灌流療法による特発性肺線維症急性増悪の治療:前向き多施設コホート研究(Abe S, et al.Respir Investig. 2024)

東京医科大学、神奈川県立循環器呼吸器病センター、日本医科大学からの重要な報告です。Direct hemoperfusion with polymyxin B immobilized fiber column (PMX) treatment for acute exacerbation of idiopathic pulmonary fibrosis: A prospective multicenter cohort study引用文献特発性肺線維症の急性増悪(AE-IPF)は、急性発症・進行性の呼吸不全を引き起こす、きわめて致命的な病態です 。1急性増悪の年間発症率は約10%とされており、本邦の北海道StudyではAE-IPFはIPF患者の主要な死因として報告されています。2その予後は極めて不良であり、文献によりさまざまですが、3ヶ月生存率が30~70%と言われています。AE-IPFに対しては、高用量コルチコステロイドを主とする薬物治療が一般的に使用されていますが、有効な治療法は確立されていません。AE-IPFに対するステロイド治療に関する記事は<こちら>をご覧ください。本邦の「特発性...
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論文紹介

乾癬患者における間質性肺疾患の有病率と臨床的特徴(Kanaji N, et al. BMC Pulm Med. 2024)

Prevalence and clinical features of interstitial lung disease in patients with psoriasis引用文献まず、乾癬について簡単に説明します。乾癬(psoriasis)は、皮膚において紅斑と銀白色の鱗屑を特徴とする疾患です。慢性疾患であり、寛解と再発を繰り返します。疫学は以下の通りです。有病率: 世界的に2~3%。日本では約0.1~0.3%性差: 男女差はほとんどなし好発年齢: 20~30代と50~60代に発症のピークありメカニズムとして、以下が考えられています。免疫異常:活性化されたT細胞による炎症性サイトカイン(IL-17、IL-23、TNF-αなど)を放出→皮膚の炎症皮膚の異常なターンオーバー: 免疫反応が皮膚の角化細胞を過剰に刺激し、通常28日周期のターンオーバーが数日で行われるようになり、皮膚の肥厚と鱗屑が蓄積を誘導する。乾癬の治療軽症例では外用薬: ステロイドやビタミンD3製剤中等症~重症例:光線療法: ナローバンドUVBやPUVA療法。免疫抑制剤:メトトレキサートやシクロスポリンなど生物学的製剤...
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喘息

重症・コントロール困難な喘息患者におけるテゼペルマブによる臨床的反応および治療中の臨床的寛解:NAVIGATOR試験およびDESTINATION試験の2年間の結果(Wechsler ME, B et al.Eur Respir J. 2024)

Clinical response and on-treatment clinical remission with tezepelumab in a broad population of patients with severe, uncontrolled asthma: results over 2 years from the NAVIGATOR and DESTINATION studies引用文献重症喘息とは、高用量吸入ステロイド(ICS)と長時間作用型β2作動薬(OCSを併用する場合もある)を用いた治療や原因への対応を行ってもコントロール困難な喘息、または高用量治療を減量すると病状が悪化する喘息と定義されております 。1 2重症喘息の患者には、しばしば生物学的製剤の併用が行われております。この論文は、テゼペルマブの臨床試験であるNAVIGATOR試験3 とDESTINATION試験4 の結果に基づいています。試験名NAVIGATOR試験DESTINATION試験実施年代2018年~2020年2020年~2022年観察期間52週間104週間目的テゼペルマブの短期的な有効性と...
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論文紹介

COPDに関連した肺高血圧症における吸入トレプロスチニル:PERFECT試験(Nathan SD, et al. Eur Respir J. 2024.)

COPDに対する吸入トレプロスチニルの試験です。Inhaled treprostinil in pulmonary hypertension associated with COPD: PERFECT study results引用文献COPD患者において、肺高血圧(PH)の合併は予後不良と関連しています。1 2COPD患者を対象としたPH治療に関するRCTは少なく、小規模研究では、シルデナフィルが肺血管抵抗を低下させてQOLを改善させる可能性を示していますが3 4、タダラフィルの研究では否定的な結果が報告されています。5 COPD-PHの生存率を改善する治療も確立していません。トレプロストニルは、プロスタサイクリンの安定した類似体であり、肺および全身動脈血管床の直接的な血管拡張を促進し、血小板凝集を抑制します。6吸入型トレプロストは、本邦ではPHやILD-PHの治療薬として承認されています(ただし、WHOの1群での有効性・安全性は確立していないとされています。)INCREASE試験については別の記事で取り上げていますが、ILD+PH患者を対象に吸入型トレプロストの安全性および有効性を...
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間質性肺疾患

間質性肺疾患に伴う肺高血圧症に対する吸入トレプロスチニルの長期使用:INCREASEオープンラベル延長試験(Waxman A, et al. Eur Respir J. 2023.)

Increase試験は16週の短期的な試験でしたが、その長期試験の結果も気になりましたので勉強してみました。Long-term inhaled treprostinil for pulmonary hypertension due to interstitial lung disease: INCREASE open-label extension study.引用文献INCREASE試験については別の記事で取り上げていますが、ILD+PH患者を対象に吸入型トレプロストの安全性および有効性を評価したランダム化臨床試験です。1 この試験では、吸入型トレプロストの16週目における6分間歩行距離の改善という主要評価項目を達成しました。注目すべきことに、この試験ではいくつかの副次評価項目も達成されています。以前の記事で取り上げたように、吸入トレプロストニルのFVC改善効果 や 臨床的悪化イベント減少とも関連する可能性が報告されています。トレプロストニルは、プロスタサイクリンの安定した類似体であり、肺および全身動脈血管床の直接的な血管拡張を促進し、血小板凝集を抑制します。2吸入型トレプロストは、...
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論文紹介

INCREASE試験における肺疾患に起因する肺高血圧症患者に対する吸入トレプロスチニルの複数疾患進行イベントに及ぼす有効性(Nathan SD, et al. Am J Respir Crit Care Med. 2022.)

引き続きIncrease試験の二次解析の論文がありました。少し古いですが、重要な論文だと思います。Efficacy of Inhaled Treprostinil on Multiple Disease Progression Events in Patients with Pulmonary Hypertension due to Parenchymal Lung Disease in the INCREASE Trial引用文献INCREASE試験については別の記事で取り上げていますが、ILD+PH患者を対象に吸入トレプロスチニルの安全性および有効性を評価したランダム化臨床試験です。1 この試験では、吸入トレプロスチニルの16週目における6分間歩行距離の改善という主要評価項目を達成しました。注目すべきことに、この試験ではいくつかの副次評価項目も達成されています。以前の記事<こちら>で取り上げたような吸入トレプロストニルのFVC改善効果だけでなく、臨床的悪化イベント減少とも関連したという結果もあるようです。INCREASE試験での臨床的悪化は、以下のいずれかが初めて発生するまでの時間...
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間質性肺疾患

間質性肺疾患に関連した肺高血圧症を有する患者における吸入トレプロスチニルと努力性肺活量: INCREASE試験のpost-hoc解析(Nathan SD, et al. Lancet Respir Med. 2021)

Increase試験を勉強したので二次解析の論文もピックアップしてみました。Inhaled treprostinil and forced vital capacity in patients with interstitial lung disease and associated pulmonary hypertension: a post-hoc analysis of the INCREASE study.引用文献INCREASE試験については別の記事で取り上げていますが、ILD+PH患者を対象に吸入トレプロスチニルの安全性および有効性を評価したランダム化臨床試験です。1 この試験では、吸入トレプロスチニルの16週目における6分間歩行距離の改善という主要評価項目を達成しました。もともとその試験では、吸入トレプロスチニルが既存ILD患者の呼吸機能に悪影響を及ぼさないかどうか安全性評価の観点で肺機能検査が行われています。しかし、予想外の結果として、吸入トレプロスチニルが16週間にわたる治療期間中に努力性肺活量(FVC)の改善と関連していることを示しました。トレプロストニルは、プロス...
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間質性肺疾患

間質性肺疾患による肺高血圧症に対する吸入トレプロスチニル ~INCREASE試験~(Waxman A, et al. N Engl J Med. 2021)

すこし古いのですが、気になったのでピックアップしてみました。Inhaled Treprostinil in Pulmonary Hypertension Due to Interstitial Lung Disease.引用文献トレプロスチニル(Treprostinil)の登場以前、特発性肺線維症(IPF)や間質性肺疾患(ILD)に合併した3群肺高血圧症(PH)に関しては、酸素療法やリハビリテーションが中心であり、特定の薬剤による治療は限定的だったと思います。トレプロスチニルは、プロスタサイクリンの安定した類似体であり、肺および全身動脈血管床の直接的な血管拡張を促進し、血小板凝集を抑制します。1 また、吸入型トレプロストは、第1群肺高血圧症の患者において12週間の治療後に運動能力を改善することが示されています。2 これまでに行われたパイロット研究のデータによれば、吸入トレプロスチニルは第3群肺高血圧症の患者において血行動態および機能的能力を改善する可能性が示唆されています⁹⁻¹²。3 4 5投与経路として、吸入、経皮、静脈注射、経口などがあり、トレプロスト®吸入液は、肺動脈性肺高血圧症...
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論文の書き方

Fine-Gray比例ハザード解析(Fine-Gray subdistribution hazard model)ってなあに?

Fine-Grayモデルは、競合リスクを考慮した統計モデルです。Cox比例ハザードモデルと同じく、生存時間分析に用いられますが、競合イベント(例:異なる原因の死亡、治療中止など)が存在する状況で、特定のイベントの発生確率を直接的に評価できる点が特徴です。Fine-GrayモデルとCoxモデルとの違いCoxモデルとFine-Grayモデルは、基本的な考え方や使用するデータ形式が似ています。したがって、大まかな概念は、Coxモデルのページを参照してください<こちら>。ちなみに、両モデルには次のような違いがあります:Coxモデル: 特定のイベントの「ハザード比」を評価する。競合リスクを考慮しない。Fine-Grayモデル: 特定のイベントの「累積発生率」(Cumulative Incidence Function: CIF)を評価する。競合リスクを考慮する。この違いにより、Fine-Grayモデルは競合リスクを含むデータでの解析に適しています。競合リスクについてはこちらのページを参照してください。Fine-Gray解析に必要なデータFine-Grayモデルを適切に解析するには、以下のデータが...
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