論文の書き方

Self-Controlled Case Series(自己対照症例シリーズ)

self-controlled case series(自己対照症例シリーズ)とは、疫学研究でよく用いられる手法であり、特徴的なアプローチを持っています。以下に手法を解説します。概要定義: 研究対象者自身を「対照」として用いる手法であり、アウトカムが発生した期間(リスク期間)とアウトカムが発生しなかった期間を比較する。曝露(例: ワクチン接種)が特定の時間枠内でアウトカムに影響を与えるかを検証する。特徴:被験者は全員がアウトカムを経験している。。個人内でリスク要因とアウトカムの関連を評価するため、個人間の交絡因子の影響を排除できる。メリット交絡因子を排除: 年齢、性別、遺伝的要因など、個人間の違いを完全に除外できる。高い効率性: 対照群を設定する必要がなく、症例データのみで解析可能。時間依存性の解析に適合: 特定のリスク期間(曝露後の一定期間など)の影響を直接評価可能。デメリット全てのアウトカムには適用不可: アウトカムが再発しない事象(例: 死亡)では適用困難。解析が複雑: 時間枠やリスク期間の設定が不適切だと、結果が正確でなくなる可能性がある。リスク期間の仮定: 曝露とアウトカムの...
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論文の書き方

逆確率重み付け法(Inverse Probability Treatment WeightingIPTW)と傾向スコアマッチング

IPTW(Inverse Probability Treatment Weighting)と通常の傾向スコアマッチング(Propensity Score Matching, PSM)は、いずれも傾向スコア(propensity score)を用いて交絡因子を調整し、観察研究で因果推論を行うための手法です。しかし、アプローチや特性、結果に至る過程にいくつかの重要な違いがあります。傾向スコアマッチング(PSM)の概要手法:傾向スコアを用いて、治療群の患者と交絡因子が似た非治療群の患者を1対1、または1対多でマッチングします。マッチング後のペアを用いて治療効果を推定します。具体的な手順:傾向スコアを計算。傾向スコアが近い治療群と非治療群の患者をマッチング。マッチングされたデータセットを用いて治療効果を推定。目的:治療群と非治療群の交絡因子をバランスさせ、治療効果の「平均処置効果(ATE)」や「処置群における平均処置効果(Average Treatment Effect on the Treated, ATT)」を評価。IPTWの概要手法:傾向スコアを用いて各患者に「重み」を割り当て、全データ...
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論文紹介

吸入ステロイド薬の用量と有害事象の発生頻度の関連(Bloom CI, et al. Am J Respir Crit Care Med. 2024.)

Association of Dose of Inhaled Corticosteroids and Frequency of Adverse Events.引用文献吸入ステロイド薬(ICS)は、呼吸器症状や肺機能の改善させ、喘息発作を予防し、死亡率を低下させるので、喘息治療ののキードラッグと言えます。ガイドラインでは、良好な喘息コントロールを達成するために、可能な限り最小の用量を処方することが推奨されてます1 2。ICSの最大の効果の80~90%は、低用量ICS(フルチカゾン換算で100–200 μg)だけで達成されると考えられています3 4。しかし、臨床現場では、低用量で十分にコントロール可能な患者に対して、過剰に高用量のICSが継続されることが結構あります 5。経口ステロイドの副作用として、心血管疾患、骨粗鬆症、白内障、副腎抑制、肥満、糖尿病などがあるので、我々はなるべく使用量や使用期間を最小限にしようとしています。しかし。ICSに関する最近の研究では以下の点が報告されています。複数のランダム化臨床試験から得られた視床下部-下垂体軸データに基づき、高用量ICSの約3分の2が全身的...
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感染症

ワクチン接種を受けた慢性肺疾患患者におけるデルタ株およびオミクロン株SARS-CoV-2転帰に関する全国規模のコホート研究(Wee LE, et al. Chest. 2024.)

A Nationwide Cohort Study of Delta and Omicron SARS-CoV-2 Outcomes in Vaccinated Individuals With Chronic Lung Disease引用文献COPD患者がCOVID-19への感受性が高くなることが報告されています。この背景には、気道上皮の免疫応答の変化やACE2受容体の発現増加が関連していると考えられています。また、死亡リスクの上昇も指摘されています。喘息患者において、特に重症喘息を持つ場合、COVID-19に感染しやすいとの報告がある一方で、軽症喘息患者では感受性が健康な人と同等であることも示唆されています。ILD患者でもCOVID-19関連死亡リスクが高いとされています。でもそれらの研究は、オミクロン期以前のデータですよね。現在の株では呼吸器疾患があるとCOVID-19の感受性や重症化率はどうなんでしょうか? ワクチンは必要なのでしょうか?研究の背景とリサーチクエスチョン慢性肺疾患を有する個人は、呼吸器ウイルス感染症に対して感受性が高いが、慢性肺疾患とCOVID-19の転帰に関す...
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間質性肺疾患

間質性肺疾患の急性増悪に対するコルチコステロイド療法: システマティックレビュー(Srivali N, et al. Thorax. 2024)

Corticosteroid therapy for treating acute exacerbation of interstitial lung diseases: a systematic review引用文献ステロイド療法は、IPFを含むILDの急性増悪時の標準治療として最も多く使用されますが、ランダム化比較試験(RCT)はなく、主に観察研究からのデータに基づいています。そのため、有効性や予後改善効果についてのエビデンスは低いとされています。同様に、免疫抑制剤や抗線維化薬なども急性増悪時の治療として有効であるというエビデンスはありません。なので、急性増悪の治療に関して「確立された治療法がない」と言うのが現状ですね。エビデンスはないですけど、経験的にステロイドを使用するしかないのが現状ですよね・・・・研究の背景と目的間質性肺疾患(ILD)の急性増悪(AE-ILD)はしばしば死亡に至り、日常診療における重大課題である。コルチコステロイドは頻繁に使用されるものの、最適な投与法やその臨床的有効性は未だ不確定である。この知識のギャップを埋めるため、本研究ではAE-ILD患者におけるステ...
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間質性肺疾患

悪性腫瘍患者における細胞障害性抗がん剤による薬剤性肺炎とILAとの関連性(Oishi, et al. Respir Med. 2024)

Association of interstitial lung abnormalities with cytotoxic agent-induced pneumonitis in patients with malignancy引用文献最近はInterstitial lung abnormalities(ILA)に注目しているのでいろいろジャーナルを見ていたらこんな論文がArticle in pressになっていました。ちなみにILAとは、「臨床的に間質性肺疾患(ILD)が疑われていない患者で偶然に発見される、ILDに適合する可能性があるCTの所見 (Hatabu et al. Lancet Respir Med 2020)」を指しています。ground-glass abnormalitiesやreticular abnormalities、lung distortion、traction bronchiectasis、honeycombing、およびnon-emphysematous cystsを含む非依存性異常が偶発的に発見されること、肺の領域(上部、中部、下部の肺領域は大動脈弓...
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今日は ねこ日和かもしれん

とてもきもちよさそうですな。出勤したくなくなりますが、病院にいかねば・・・
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間質性肺疾患

Fibrotic HPとIPFを区別するためのCT診断モデルの検証(Sumikawa, et al. Respir Investig. 2024)

Validation of a computed tomography diagnostic model for differentiating fibrotic hypersensitivity pneumonitis from idiopathic pulmonary fibrosis引用文献過敏性肺炎(HP)には、線維化の有無に応じて非線維化(non-fibrotic)型と線維化(fibrotic)型の2つの表現型に分類されます。ガイドラインでは、「typical HP(典型的)」、「compatible with HP(HPに合致する)」、および「indeterminate for HP(HPかどうか微妙)」のような高分解能CT(HRCT)パターンが示されています。HPに特徴的な所見の分布として、【ランダムな分布】【中肺野優位】【下肺野が比較的スペアされる分布】があります。fibrotic HPに見られる所見として、小気道の異常、例えば不明瞭な中心小葉性結節、mosaic attenuation、three-density pattern、エアトラッピングなどが挙げられます。簡...
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論文の書き方

データ解析:平均値と中央値 どちらを使う? 群間比較に用いる統計は? 正規分布って??

前向き・後ろ向きを問わず、臨床研究では「A群とB群の年齢の比較」など、複数の群間における興味ある変数の比較が重要ですね。このような解析のときには、そのような変数は平均値で表した方がよいのか?それとも中央値で表した方がよいのかどちらがよいのでしょうか?あと聞きたいんですが、興味ある変数の群間比較にはt検定とかマン・ホイットニーとかがありますが、どれを使えばいいんですか?その前に、まずは目的の変数が正規分布しているかどうかを評価しよう平均値で表した方がよいのか、それとも中央値で表した方がよいのかを決めるときには、まず、その変数が正規分布かどうかを判別します。その時には、主に以下の方法を使用します。(1) 視覚的な確認ヒストグラムを作成して、データが正規分布に従っているかを視覚的に確認します。(まずは見た目で。)(2) 統計検定シャピロ・ウィルク検定やコルモゴロフ・スミルノフ検定を用いて、データが正規分布に従っているかを検定します。帰無仮説:データは正規分布に従う。検定結果のp値が0.05未満の場合、正規分布ではないと判断します。 シャピロ・ウィルク検定(Shapiro-Wilk Test)...
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未分類

今後の投稿予定

そろそろ2024年末ですね。インフルエンザが増えてきて、その二次性肺炎などでの入院患者さんが増 えてきてます・・・さて、サイトが立ち上がってきましたのでちょこちょこと記事を更新していきたいと思います。
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